先輩から逃げる方法を探しています。
数日後。
俺は本当にしゅがーちゃんの思惑に嵌められていた。
「紹介するわね!2人と同じ天文部の部員の雨谷耀くんよ」
笑顔で紙袋を被った謎の人物に手を向ける。
ほんの数分前までは、この空き教室に来て、翼ちゃんがいて…
入るとは思ってもいなかったために驚きと嬉しさを感じていた。
俺と2人きりでも嫌じゃないということだと思ったからだ。
だけど、どうやらそうじゃないらしい。
「どうも。3年の雨谷耀です。もしかしたら知ってるかもしれないけど、よろしくお願いします」
頭に被っていた紙袋を取り、挨拶をする。
キラキラしたものが見えてきそうなくらいのオーラと笑顔。
確か……そうだ。テレビで見たことがある。
そういえば「同学年にアイドルがいるらしい」なんて話を聞いたことがあった。
多分、この雨谷耀がそのアイドルなのだろう。
「え?2人とも無反応だけど耀くん知らない?あの耀くんなのよ?凄くない?びっくりしない?」
「佐藤先生。知らない人だっていますよ。ちょっとショックですけど、俺もまだまだですね」
「いやいやいや何言ってるのー!絶対知ってるはずよ。ね、松木くん!伊坂さん!」
「え、えぇ…まぁ知ってはいますけど」
こういう時に、翼ちゃんの無表情やクールな反応は少し困る。
このアイドルに会えて嬉しいと思っているのか、もしかしてファンだったりするのかがわからない。