先輩から逃げる方法を探しています。


少なくとも、困ったり嫌だったりするわけではないようだ。

まぁ、翼ちゃんは女の子だしこんなキラキライケメンアイドルに会えて…

しかも一緒の部活に入るなんて嫌だと思うわけがないだろう。


「聞いてないよ、しゅがーちゃん…翼ちゃんと2人きりって言ってたじゃん。ねぇ、どういうことなわけ?」

「あら~?私、そんなこと言ったかしら~?」

「しゅがーちゃん……」


口を尖らせ、出来もしない口笛を鳴らそうとする。

それに、翼ちゃんと2人きりじゃなかったからだけが嫌だというわけじゃない。

同学年ということは、俺の噂を知らないわけがないからだ。

どうせすぐに「怖い」と言うだろう。

おまけにアイドルなら俺なんかと同じ部活に入ることは避けるはずだ。

イメージが悪くなる。


「えぇっと……なんかごめんな?俺みたいな奴が入ると迷惑だよな」


さすがアイドル。建前が上手い。

「だから部活に入るのはやめます」とか言うんだろう、きっと。


「折角、友達になれると思ったんだけど…」

「友達…」


雨谷の方へと目を向けると、笑ってはいたが寂しそうな顔をしていた。

俺は『怖いと決めつけられている』と思っていたが…

俺もまた『怖いと思われている』と勝手に決めつけてしまっていた。

こんなことを言われて、こんな顔をされるのは初めてだ。


「俺は松木春佳っていうんだ~。気軽にはるって呼んでねぇ」

「えっ…俺、邪魔じゃ…ないのか?」

「邪魔なわけないじゃ~ん。同じ学年同士、これからよろしくねぇ」

「あ、あぁ!よろしくな、はる」


先程とは違う、嬉しそうな笑顔を見せてくれる。

2人きりではなかったことは残念だけど、雨谷…耀ちんとなら3人でも楽しくやれそうだ。


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