先輩から逃げる方法を探しています。


ここ最近、放課後は部室に来ては耀ちんと話しているため、猫のところに行っているのか気になっていたのだろう。

餌をあげてるのが俺だから。


「そういえば猫に名前を付けようと思って耀ちんに相談したんだけど…」


翼ちゃんは髪をくるくると人差し指で巻き始めた。


「それでさー耀ちんってばねぇ」


くるくると回っていた人差し指は急にピタリと止まる。


「また雨谷先輩の話ですか」

「え」


考え事をしているから話の流れからして、てっきり翼ちゃんも猫の名前を考えているのかと思っていた。

が、想像もしていない言葉が翼ちゃんの口から出てきて驚く。

驚いているのは俺だけではなく、どうやら言った本人も驚いている様子。


「……え?…あの……先輩。私、何か言いました?」


驚いていたのは、自分の言った言葉にではなく、俺の反応に対してだった。

自分で言った言葉に気付いてない。無意識で言っている。

こんなの…


「何?無意識?翼ちゃん無意識で言ったの?「また雨谷先輩の話ですか」なんて」

「えっ…」

「もしかして翼ちゃん嫉妬してるの?」


俺が最近、翼ちゃんよりも耀ちんと話していることが多いから嫉妬している、と俺の良いようにしか捉えられない。


「は、はぁっ!?そんなわけないじゃないですかっ…!?」


勢いよく椅子から立ち上がった翼ちゃんの顔は、体育祭の時に見た顔と同じ。

真っ赤になっている。

こんな反応されたら嫉妬していることが図星なんだと増々、俺の良いようにしか捉えられない。

どうしてこういう表情だけはわかりやすく顔に出すのかな、翼ちゃん。

可愛すぎて困るんだけど。

俺は翼ちゃんに対して、友達以上の感情があるのは確かなようだ。





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