先輩から逃げる方法を探しています。
7月7日の合宿当日。
翼ちゃんに「とーっても大切な友達以上」と言ったあの日以降、どうも俺は避けられている気がする。
休み時間に中々会うことがなくなったし、見つけても逃げるように小走りでどこかに行ってしまう。
今日なんて部屋にいるのに堂々と無視をされてしまった。
勉強をしていたから気づかなかった、とは言っていたが嘘をついていることはお見通しだ。
翼ちゃんは嘘をつく時、耳たぶを少し触る。
少しは話すことが出来たけど、耀ちんと買い出しに行っちゃったし…。
「はぁ……」
「折角の合宿なのにどうして溜め息なんてついてるの?」
「しゅがーちゃんはいつも呑気で元気でいいよねぇ」
「何言ってるのー?私は手のかかる生徒がいるからいつも大変よ」
「わー誰だろ」
「まとつときとはとるとよとしがつく子ね」
「と、しか頭に入ってこなかったなぁ」
天体観測で使う道具を車からコテージへと運び終わり、椅子に腰を下ろす。
しゅがーちゃんは俺の目の前に座ると、机に両肘をつき、手に顔を乗せて此方を見てくる。
「悩みなら先生が聞いてあげるわよ?」
「しゅがーちゃんに話す悩みなんてないよ」
「えーっ!?先生、恋バナしたーい!松木くんの好きな子はずばり伊坂さんでしょー?」
「……………」
「あっ!何よその顔はー」
頬を膨らませ、しかめっ面を見せる。
ほんとにいつも楽しそうだな、この人は。