契約書は婚姻届
来たときとは打って変わって明夫は明るい表情でエレベーターを待っていたが、朋香には不安しかなかった。

チン、到着を告げる音に俯き気味だった顔を上げる。

ドアが開くと明夫が慌てて道をあけた。

「押部(おしべ)社長だ」

朋香も慌てて道をあけ、あたまを下げる。
ちらりと見えた男は金髪で、どうみても日本人には見えなかった。

「こんなとこで会うなんて珍しいな」

社長一行を見送り、閉まり始めたドアに慌ててエレベーターに乗り込む。

「押部社長って」

「ああ。
ドイツ人ハーフらしいぞ。
俺も詳しくは知らんが。
……しかし。
とんだ杞憂だったな」

「……そうだね」
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