契約書は婚姻届
「ん?
朋香、どうかしたのかい?」

タブレットを置くと、尚一郎がちゅっと額に口付けを落とした。

「あー、あのですね」

「ん?」

レンズの向こうの碧い瞳が、不思議そうに自分を見ている。
いままでの尚一郎からいって、お願いをして怒られることはないと思う。

……聞き入れられるかどうかは別だが。

「その、……外出したいです」

「いまからかい?
そうだな、夜のドライブもいいかもね。
の……」

「そうじゃなくて!」

野々村を呼びかけた尚一郎を慌てて止める。

「そうじゃなくて。
その……」
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