契約書は婚姻届
唯一、国産車のものがあるが……レクサスで、部類はほぼ高級外車だ。

「左ハンドルを気にしてるんだったら、右ハンドルに変えられるから気にしなくていいよ」

「……はあ」

問題はそこではないのだ。

自分が気軽に乗れる車が欲しいわけで、外車など気が引ける。
だからといって軽自動車やコンパクトが欲しいといっても認めてもらえそうにない空気。

……こんな車買ってもらったって、ガレージの置物になるだけだと思うんだけど。

朋香の手に余る車のカタログばかり見せたがる尚一郎に内心ため息をついていると、下の方にちらりとコンパクトに近い車の写真が見えた。
引っ張り出してみると、尚一郎が見せる車よりも小さく、結構可愛い気がする。

「これはダメですか?」

「……」

上目使いで窺うと、尚一郎が黙った。
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