契約書は婚姻届
「尚一郎君から連絡があった。
土曜日に迎えにくるそうだ」

土曜日といえば明後日。
悠長に待っていていいとは思えない。

「迎えに来てもらわなくても、これ食べたら帰るから」

「朋香」

箸を置くと明夫がじっと見つめてくる。
なんとなく怒られたような気がして、思わず座り直していた。

「尚一郎君が待っていて欲しいと云っているんだ。
信頼して待っていてやれ」

「……わかった」

……そうか、私は尚一郎さんを信頼してなかったんだ。

明夫の言葉に、自分の気持ちを気付かされた。

だから、侑岐にべたべたされる尚一郎を見て不安になった。
達之助に結婚の話を勝手に進められて、その通りにするんじゃないかなどと考えてしまった。

……これじゃ私、尚一郎さんの妻、失格だ。
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