契約書は婚姻届
明夫が午後の仕事に戻ってから、家族のアルバムを広げてみた。
そこには、母の和子が幸せそうに笑っている。
和子が見ている先にいるのは、ほとんど明夫だ。

和子は本当に明夫のことが好きで、朋香と洋太の前でものろけていた。
あまりにのろけるものだから、一度聞いてみたことがある。

明夫が浮気するとか考えないのかって。

「そんな無駄なこと、考えたことない。
だってお父さんが愛してるのは、母さんだけだもの」

豪快に笑い飛ばす和子に、のろけもここまでくると凄いな、と高校生の朋香はは半ば呆れていた。

でも、いまならわかる。

和子はそんな考えすら思い浮かばないほど、明夫を信頼し、愛していたのだ。

「お母さんを見習わないとね」

スタートが契約結婚だっただけに、尚一郎を朋香が全面的に信頼できないのは仕方ないのかもしれない。
 
けれど、一緒に過ごすうちに、いろいろなことを知った。
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