契約書は婚姻届
優しいことも、本当は淋しがっていることも。
達之助から朋香を守ろうとしてくれていることも。

尚一郎が好きだ。
侑岐にべたべたされる尚一郎に、腹が立つほどに。

いつか。

……いつか、和子と明夫のような夫婦になりたい。

 
夜は、明夫が洋太とともに行きつけの焼鳥屋へ連れてきてくれた。

「押部の奥様じゃ、なかなかこういう店には来れないだろ」

苦笑いの明夫に苦笑いで返す。
すぐに出てきたビールで乾杯。

「最初は不安だったが、今回のことで安心した」

「え?」

ビールをゴクゴクと一気に半分まで開け、ぷはーと息を吐いた明夫に首を傾げてしまう。
夫婦喧嘩して実家に帰ってきているのに、安心したはないだろう。
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