契約書は婚姻届
「朋香は尚一郎君のところに“帰る”って云ってただろ?
行く、じゃなく」

「あ……」

確かに云った、帰ると。

「もう朋香にとって、尚一郎君のところが自分の居場所になってるんだなーって」

「そう、だね」

熱くなった顔を誤魔化すようにビールジョッキを口に運ぶ。

……そうか。
私にとって、もうあそこが自分の家なんだ。

 
久しぶりに食べる焼き鳥は美味しかった。

洋太と昔のように莫迦話をしながら、……ここに、尚一郎さんがいたら。

そんなことを朋香は考えていた。



金曜は家政婦が来る日だが、知らない人間がいると落ち着かないだろうと明夫が断ってくれた。
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