契約書は婚姻届
「おはよう」

朝食を作っていると明夫が起きてきた。
台所に立っている朋香に、なにも云わずに新聞を取りに行く。

「……おはよう」

そのうち、寝癖だらけのあたまをボリボリ掻きながら洋太が起きてきた。
洗面所に消えていくのを横目に、味噌汁をよそう。
あるもので作ったから、今日はタマネギとジャガイモの味噌汁、だし巻き卵にカボチャの煮物、それに常備菜の切り干し大根。

「じゃあ、いただきます」

「いただきます」

「いただきます」

三人そろうと手を合わせて食べ始める。
尚一郎と結婚する前は、これが当たり前の風景だった。

「やっぱ、姉ちゃんが作った味噌汁が美味しいよな。
おやじが作ったのはなんか、いまいちなんだよ」
 
「……文句あるのか」
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