契約書は婚姻届
「……ない」

明夫に睨まれて、黙ってしまった洋太に苦笑い。

……もし。

尚一郎にこうやって料理を作ったら、喜んでくれるんだろうか。

ふとそんな考えが思い浮かんだが、味噌汁とともに飲み込んだ。

 
ふたりが仕事に出ていくと、朋香は自分の部屋の片付けをはじめた。

家を出たときは急だったから、そのままになっている。
けれど、朋香の家はもう、ここではないのだ。

尚一郎のいるところが自分の家。

ここにはたまに帰ってくるだけだから、きれいに片付けておくべきだと思った。

 

ピンポーン、適当に昼食をすませ片付けを再開しようとすると、チャイムが鳴った。
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