契約書は婚姻届
「ん?」

レースのカーテン越しに差し込む月の光が、眼鏡のレンズに反射してきらりと光った。
尚一郎の首に腕を回して抱き寄せ、その唇に自らの唇を重ねる。

「……Ich liebe dich.……です」

上からじっと、尚一郎の碧い瞳に見つめられた。

ただ、それだけで心臓がどきどきと早く鼓動する。

そっと頬にふれた手に見つめ返すと、尚一郎の方から今度は唇が重なった。

数度、啄むような口付けをされ、たまらなくなって甘い吐息が唇から落ちる。

再び少しだけずれて重なった唇は深く、僅かに開いていた朋香の唇が、尚一郎の侵入を許した。

抑えきれない気持ちを伝えるような口付けは、朋香の思考を奪っていく。

息継ぎをするたびに、朋香の口からも尚一郎の口からも、熱を、艶を帯びた吐息が漏れた。
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