契約書は婚姻届
尚恭の問いにかまうことなく、尚一郎はつかつかと部屋の中に入ってくる。

「土下座しました。中に入れてくださいとCEOに。
どんなことでもすると誓ったので、あとでなにか云ってくるでしょうね」

「……面倒なことを」

はぁーっ、尚恭の口からため息が落ちた。
きっと、達之助から出される命は尚恭にとって、ひいてはオシベグループにとって都合の悪いものなのだろう。

「ごめんね、朋香。
遅くなって。
こんなに泣かされるなんて、COOになにを云われたんだい?」

傍に膝をついた尚一郎が涙を拭うと、ますます涙が出てくる。

「尚一郎さん……!」

「あ、危ない……!」

椅子から落ちるなどかまわずに、抱きついてきた朋香を尚一郎が慌てて受け止めた。
泣きじゃくる朋香を胸に抱いたまま、尚一郎は尚恭を睨みつける。
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