契約書は婚姻届
「なにを云ったんですか、朋香に。
返答如何によっては、たとえCOOでも許さない……!」

「……おまえは万理奈さんの件でまだ懲りてないのか」

「それは……」

……また万理奈だ。

その名前が出た途端、尚一郎は黙り朋香を抱きしめる手にぎりっと力が入った。

「朋香は万理奈と同じにはしません。
もちろん、あなたと同じ轍も踏まない。
今度こそ絶対に、私は朋香を守ってみせる」

「……おまえにできるものか」

嘲笑するような声に、さらに尚一郎の手に力が入る。
なにも云えない朋香は固唾をのんで見守っていた。

「昔の、なにもできない子供の私と一緒にしないでいただきたいですね。
私はあなたとは違う。
朋香を絶対に、幸せにしてみせる。
……お話は終わりのようですね。
帰ろう、朋香」
< 291 / 541 >

この作品をシェア

pagetop