契約書は婚姻届
朋香を抱き上げ、尚一郎が立ち上がった。
普段なら恥ずかしくて降ろせと暴れるところだが、今日は精神をゴリゴリ削られ、そんな気力はない。
甘えるように首に腕を回して抱きつき、その肩に顔をうずめた。

「待ちなさい」

尚恭にかまわず一歩踏み出した尚一郎だったが、呼び止められて振り返る。

「結婚したことはカーテにも報告しなさい。
きっと喜ぶ」

「よけいなお世話です」

ふいっ、尚一郎が視線を逸らす。
僅かに目元が赤い気がするのは見間違いだろうか。


そのまま屋敷を出ると、待っていたベンツに乗り込む。
車の中では指を絡めて手を繋ぎ、尚一郎の肩に寄りかかっていた。

「尚一郎さん」

「なんだい?」
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