契約書は婚姻届
併設されているレストランに入り、昼食をとる。

朝食を食べたあと、ずっと車に乗っているだけだったからあまりお腹は減ってなく、少し食べただけで箸を置いてしまう。
もっとも、朝食もほとんど喉を通らず、残してしまったのだったが。

「視線、気になるのかい?」

「いえ……」

気になる、といえば気になる。
車を降りたときから、いつものように注目されているから。
でも、今日はそれすらどうでもよかった。

「じゃあ、どうしたんだい?」

「あまりお腹、空いてないので」

心配そうな尚一郎に苦笑いで返す。

「じゃあ、もう出ようか」

箸を置いた尚一郎のお皿の中身も、半分ほどしか減ってなかった。
 

車に戻ると再び沈黙が訪れる。
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