契約書は婚姻届
第13話 花嫁修業
「朋香、あーん」

うっとりと眼鏡の奥の目を細め、差し出されるクッキーを素直に口に入れる。

「Mein Schatz」

ちゅっ、ちゅっ。

頬に、額に、瞼に……そして唇に落とされる口付けがくすぐったく、それでいて嬉しい。

膝の上に載せられ、尚一郎に溺愛される。

ただ、それだけで朋香は幸せだった。

「朋香。
今晩……」

“君を抱いていいかい?”
 
こっそりと耳元で囁かれた言葉に、一気に身体中が熱くなった。

ずっと、タイミングが合わなくて、尚一郎とはいまだに結ばれていない。

やっと、という思いもある。
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