契約書は婚姻届
「本宅より使いがございました。
本日の夕食、一緒にせよとのことでございます」

「ああ、そう……」

がっくりと尚一郎の首が落ちたが、かまうことなく野々村は一礼すると出て行った。

「……今日もダメ、みたいだね」

悲しそうに瞳を潤ませ朋香の髪を撫でる尚一郎に、苦笑いしかできなかった。



車は長い竹林を抜けると右に曲がった。
今日、尚一郎を呼んだのは尚恭らしい。

「きっと、このあいだの件だと思うんだよね」

このあいだの件とは、朋香を迎えに来るために、達之助にあたまを下げた件のことだろう。
その際、尚一郎はなんでもすると約束したようだから。

しかし、ならば呼ぶのは達之助のはず。

腑に落ちないまま屋敷に着くと、尚恭に出迎えられた。
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