契約書は婚姻届
尚一郎の顔が、苦しげに歪む。
握られた手は痛いくらいで、尚一郎の苦悩がよくわかった。

「大丈夫ですよ、尚一郎さん」

精一杯、笑顔を作って尚一郎を見上げる。

「私、認めてもらえるように頑張りますから。
そんなに心配しなくて大丈夫です」

「朋香……!」

次の瞬間、痛いくらいに尚一郎に抱きしめられていた。

「なるべく早く、片付けるから。
ごめんね、こんなことになって本当にごめん」

「しょ、尚一郎さん!
痛い、痛いです!
それに、お義父さんが見てますから!」

迫ってくる尚一郎の顔を慌てて手で抑えて抵抗する。
それに、尚恭がにやにやと笑って見ていて、赤面しそうだ。

「なんであなたがいるんですか。
さっさと出て行ってくれないですか」

「……ここは私の屋敷なんだが」
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