契約書は婚姻届
「準備ができたら一階に降りておいで。
朝食にしよう」

「……はい」

すっかり俯いてしまった朋香を残してドアがぱたんと閉まる。
閉まる直前、尚一郎がおかしそうに小さくくすりと笑った気がしてますます恥ずかしくなった。

 
バス、トイレは部屋に付いてると云われたが、廊下に出る以外に右手に二つ、左手に一つとドアが三つもある。

とりあえず右手手前のドアを開けてみるとトイレだった。
中にさらにドアがあって、開けてみると洗面所兼用のバスルーム。

「うわーっ」

思わず、朋香の口から感嘆の声が漏れる。

白いタイルに置かれる、猫足の白のバスタブ。
洗面台はダークブラウンを基調としており、まるで海外のおしゃれな家のようだった。

「やっぱりお金持ちは違うね」

つい、憎まれ口をたたきながらも、顔はゆるみきっている。
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