契約書は婚姻届
向かい合う朋香の正面に座る亮平に、隣に座る桃子は手を握ってべったりとくっついている。
これで誤解もなにもないだろう。

「俺は淡島を送っていっただけ、で」

「泊まったんだよね」

「終電なくなってたから!
でも、泊まっただけでなにも!」

「へー」

焦ってる亮平が白々しくて、ずずっと冷たいアイスコーヒーを飲むとあたまがさらに冷えた。

「亮平くーん。
今日も桃子のおうちにお泊まりする?」

「ちょっ、桃子、黙ってろ」

張り付く桃子を引き剥がしてみせる亮平だが、あきらかに鼻の下が延びている。
桃子がちらりと勝ち誇った視線を投げてきて、完全に気持ちが醒めた。

こんな、男のことしかあたまにない女に引っかかる亮平も亮平だと思うし、そんな亮平を好きだった自分も莫迦だと思う。
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