契約書は婚姻届
バスルームにあった、別のドアを開けると想像通り部屋に戻った。

スーツケースから着替えを出していそいそとシャワーを浴びる。

身支度を整えて部屋を出ようとして、バス、トイレとは反対にあるドアも気になった。

「一応、ね」

そっとドアを開けてみると、そこは衣装部屋になっていた。
しかも、すでに半分ほどが埋まっている。

「押部社長の趣味なのかな」

シンプルできれいめのラインナップ。
ただし、パンツ系、とくにジーンズは一本もない。

「どうでもいいけど、買い過ぎじゃない?」

一日二回着替えたって、ひと月で全部の服が着れるかどうかも怪しい量。
金持ちの考えることはわからない。

大量の服が入った衣装室にげんなりしつつ、一階に降りたところで野々村が待っていた。
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