契約書は婚姻届
犬飼に会った翌日、テレビをつけるとまた、尚一郎が記者に囲まれていた。

「今回の件について一言お願いします!」

「被害に遭われた方々には深くお詫び申し上げます」

そのまま待っていた車に乗ると、拒絶するかのようにバタンとドアを閉め、去っていく。

「やっぱりお疲れ、だよね……」

キラキラしていないどころか、くすんで見える尚一郎に悲しくなる。
傍にいられたらきっと、なにかできたはずなのだ。
なのに。



尚一郎は朋香と別れたあと、臨時の役員会を開いた。

そこで、若園製作所の偽装のでっち上げについて証拠をそろえて提出。
達之助に退陣を迫るが、達之助は開き直って今度は、尚一郎にヨーロッパ本社の全権を預けるなどと提案してくる。

尚一郎は追加で、エルピス製薬をはじめ複数の会社に及ぶ詐欺行為や、議員や病院、経済連への汚職の証拠を提出した。
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