契約書は婚姻届
あの気持ちに嘘偽りはなかった。
なのに自分はいま、なにをしているのだろう。

ぐいっと涙を拭うと、朋香は万理奈へ力強く頷いた。

「絶対に私が尚一郎さんを幸せにしますから、安心してください」

嬉しそうに笑う万理奈に、尚一郎を託された気がした。



若園製作所はまだ、和解か徹底抗戦かで揉めていた。

「ほかの会社もいくつか、訴訟の準備を始めてる。
それに、元CEOは逮捕されたじゃないか!
徹底的に争うべきじゃないのか?」

「でもなー。
悪いのは元CEOで尚一郎社長は一度、うちを助けてくれたしなー」

「あれだって元々は、オシベが契約打ち切りを云ってきたからじゃないか!
それに、朋香さんと結婚が条件とか、無理難題云ってきやがって!」

そうだそうだと皆が頷いた。
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