契約書は婚姻届
「和解を受け入れるのに、条件を付けたいの。
その条件の内容はいまはまだ云えないけど。
でも、私は……尚一郎さんを試したい」

「そんなことできるか!」

「徹底抗戦だ!」

「でも朋香さんには恩があるし……」

再びざわめく室内に、やはり受け入れられないのかと軽く落胆した。
きっと無理だろうとはわかっていたが、それでもやはり。

「まあまあ」

なだめる明夫の声にざわめきが止まる。

「ここは朋香に、任せてもらえないだろうか。
親莫迦で申し訳ないが、娘の望むことは叶えてやりたい。
それに、朋香には二度も工場を救われた。
あのとき、朋香が押部会長と結婚してくれたから、契約は続行され、融資も受けられた。
今回だって朋香のおかげで丸尾弁護士を雇えたんだ。
今度は我々が、朋香のためになにかする番じゃないだろうか」

「お父さん……」
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