契約書は婚姻届
明夫の気持ちが嬉しい。
個人的な事情を持ち出した朋香を援護してくれるなんて思わなかった。

「まあ、どっちに転んでも悪い結果じゃないですからね。
任せてもいいですが、条件はやはり、話してもらわないと」

徹底抗戦派の西井が、照れくさそうにポリポリと頬を掻きながら立ち上がる。
朋香としては人に云うのは酷く恥ずかしい条件なので、当日まで秘密にしておきたいが、やはりそうはいかないだろう。

「その。
……私との再婚が条件、です」

「はぁーっ!?」

一気にまた、室内がざわつき出す。

「朋香さん、この離婚で懲りてないんですか?」

「押部の野郎と再婚したって幸せになれないですよ、それなら俺が」

「おまえなんかと結婚して幸せになれるか!
それより僕と」

「朋香ちゃん、騙されてない?」
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