契約書は婚姻届
口々に好き勝手云う職員たちに苦笑いしかできない。

「あの。
私、尚一郎さんにとても、とても、とても愛されてたんです。
だからきっと、これは尚一郎さんが望んだ離婚じゃないと思うから。
それに私は、尚一郎さんを絶対に幸せにするって誓った……から……」

「朋香……」

「朋香さん……」

「朋香ちゃん……」

最後の方は鼻声になっていて情けなくなる。
まだまだ、戦わなければいけないのだ。
こんなところで弱気になっていてはいけない。

「だから、もう一度結婚して、尚一郎さんを今度は私が幸せにするんです。
だからご協力、お願いします!」

努めて明るく振る舞うと、拍手が起きた。

「ありがとうございます」
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