契約書は婚姻届
自分の我が儘を聞いてくれる工場のみんなに、尚一郎じゃないが潰すことにならなくてよかったと思う。



尚一郎が工場を訪れる前日、朋香は病院を訪れていた。

「おめでとうございます。
妊娠五週目です」

「そうですか……」

ここのところ忙しくて気にしてなかったが、生理が遅れていた。
昨日、もしかしてと思って市販の検査キットを使うと陽性反応が出た。

「尚一郎さんは喜んでくれるのかな……」

別れる前、あんなに朋香が妊娠していると決めつけ、扱っていたのはきっと、尚一郎の願望なんじゃないだろうか。

朋香と、家族を持つことを夢見ていたから。

だから、もうすぐ終わりがくるとわかっていたからこそ、ああいう態度をとっていたんじゃないか。
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