契約書は婚姻届
「尚一郎さん。
私たちの子供ですよ。
喜んでくれますよね?
あんなに、待ってたんだから……」

そっとおなかを撫でると涙が出てくる。

――明日。
すべてが決まる。



社長室で、明夫の隣に緊張して座っていた。
明夫の隣には和解の話もあるので丸尾が控えている。
昨晩は子供のためにもちゃんと寝なくちゃいけないとわかっていながら、一睡もできなかった。

「押部CEOがお見えです」

案内してきた女子事務員の声に、ソファーから慌て立ち上がる。

「本日はありがとうございました」

部屋に入ってきた尚一郎は朋香を目に留めると一瞬、足を止めたが、すぐに何事もないかのように勧められたソファーに座った。
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