契約書は婚姻届
その隣に羽山が座り、後ろに立った犬飼は朋香と目が合うと、短く頷いた。

「いえ、こちらこそわざわざご足労、ありがとうございます」

にこやかに笑っている尚一郎は、どこか人を寄せ付けないように気を張っているように見えた。
そんなところもまた、朋香を悲しくさせる。

「それで。
こちらの謝罪を受け入れ、和解に応じてくださるということで、本当にありがとうございます」

「それが、その、……一つ条件がありまして」

「は?」

慇懃にあたまを下げた尚一郎だったが、驚いたのかぱっと勢いよくあたまを上げた。

「……朋香」

「はい。
……私と、再婚してください。
これが和解に応じる条件です」

「……っ」
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