契約書は婚姻届
でも、そんなことは朋香にとって、些細な問題だった。

「君との結婚は遊びだったと云っただろう?」

「……いま、五週目だそうです」

「は?」

その場にいた全員の目が朋香に向く。
ごそごそと横に置いてあったファイルから診断書を出すと、婚姻届の横に並べて置いた。

「尚一郎さんの子供を妊娠しています」

はぁーっ、診断書を確認した尚一郎はため息をつくと、それを机の上に投げ捨てた。

「子供を盾に僕に結婚を迫るのか?
産みたければ勝手に産めばいい。
認知はしない、十分な慰謝料は払ったしな」

きっと喜んでくれると思ったのは、自分の浅はかな期待だったのだろうか。
やはり、押部の家を途絶えさせるために不要だとでもいうのだろうか。

きつく唇を噛んで俯いてしまった朋香に尚一郎はなにも云わない。
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