契約書は婚姻届
「かまいません」

「子供だって犯罪者の曾孫って不幸にするよ」

「私が絶対に、そんなことにはさせません」

「それに……」

「そんなに尚一郎さんは、私と一緒にいたくないんですか」

ぐいっと尚一郎の顔を両手で掴んでじっと見つめる。
レンズの向こうから泣き出しそうな目がこちらをじっと見ていた。

「私は尚一郎さんを……。
Ich liebe dich.です」

「……Besten Dank(本当にありがとう),朋香」

尚一郎が一度瞬きするときれいな涙が一滴、落ちていった。
眩しそうに細められた目に、心臓がぎゅーっと締め付けられる。
尚一郎は握っていたペンで、婚姻届の夫の欄にサインした。

「あとで、やめとけばよかったって云ってももう遅いんだよ」

「かまいません」
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