契約書は婚姻届
怪訝そうに顔をのぞき込まれて、どうにかもちこたえる。

「い、いえ、なにも。
……よろしく、ロッテ」

「ワン!」

「……ぷっ」

得意げなロッテに耐えかねてとうとう笑い出してしまった朋香を、尚一郎は不思議そうに見ていた。

 
ロッテをお供に庭を少し散歩して中に戻る。

お茶がすむと尚一郎は少し仕事をすると書斎に行ってしまった。

暇になった朋香は、部屋に戻ってスーツケースの中身の整理を始めたが、すぐに終わってしまう。

ソファーで、クッションを抱いて寝ころぶと、今日感じた疑問が浮かんできた。

家族を“CEO”“COO”と役職で呼んでいたこと。
明夫のことは嬉しそうに“お義父さん”などと呼んでいた癖に。
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