契約書は婚姻届
野々村の声に飛び起きた。
考えながらいつの間にか眠っていたみたいだ。
寝起きを悟られないように身なりを整え、食堂に行くとすでに尚一郎は待っていた。

「今日は朋香の歓迎の意味も込めて、豪華にしてもらったよ」

「……ありがとうございます」

着いたテーブルは今朝とクロスを変えてあった。
そのうえ、花が飾ってあり、キャンドルまで灯っていた。

数度だけ亮平と行ったことのある高級レストランよりも、高級感がある気がする。

さらに、目の前のテーブルセッティングが朋香をさらに緊張させた。

お皿を中心にカトラリーがいくつも並べてあるし、グラスだって複数置いてある。
普通の家の、さらには普通の夕飯で、こんなことはまずやらない。

……テーブルマナーは一応、知ってるけど。
ここまで本格的なのは自信ない。

そもそも、昼食を食べた時点でなんとなく嫌な予感はしていたのだ。
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