契約書は婚姻届
今日はずっと、そんな感じで嬉しそうに、尚一郎から見られてばかりな気がした。

 
デザートに季節の果物をふんだんに使ったケーキまで食べ、食事が終わる。

最初、心配したほど、マナーで困ることはなかった。
というか、朋香が戸惑いの表情を見せると、尚一郎がさりげなく手本を見せてくれる。


食堂からリビングに場所を移すと、今朝と同じで膝の上に座らせられた。
抵抗したものの下ろしてはもらえず、仕方なくおとなしくする。

尚一郎といえば、朋香に時々口付けを落としながら、タブレットをずっと見ている。

「……尚一郎、さん」

「なに?」

視線はタブレットに向いたまま、ちゅっと額に口付けられた。
そういうのははっきり云ってムカつく。

「私はいったい、なにをすれば?」
< 63 / 541 >

この作品をシェア

pagetop