契約書は婚姻届
そっと手が髪を撫で、唇が額にふれる。
笑っているけれど、どことなく淋しそうな尚一郎に、一瞬、胸がずきんと痛んだ。
「僕を抱きしめてくれるかな。
それで、『愛してる』って囁いて。
嘘でかまわないから」
「嫌ですよ、そんな」
好きでもない相手に、そんなことを冗談でも云いたくない。
尚一郎の首に回された腕をほどき、膝から飛び降りようとしたが、逃げられないように抱きしめられてしまった。
「ダメかい?」
肩に載っている尚一郎の見えない顔からは、泣きそうな声。
まるで母に縋る幼子のような尚一郎に、朋香はなにも云えなくなってしまった。
「……うん。
朋香が嫌がることはしたくないからね。
Verzeihung.……Ich liebe dich.du bist mein Shatzt」
耳元でぼそぼそと囁かれた言葉の意味はわからない。
かろうじて、「マインシャッツ」とだけは聞き取れた。
顔を離すと、泣き出しそうに歪んだ目が、レンズの向こうから朋香を見ている。
唇に口付けを落とすと、尚一郎は朋香を膝から下ろした。
笑っているけれど、どことなく淋しそうな尚一郎に、一瞬、胸がずきんと痛んだ。
「僕を抱きしめてくれるかな。
それで、『愛してる』って囁いて。
嘘でかまわないから」
「嫌ですよ、そんな」
好きでもない相手に、そんなことを冗談でも云いたくない。
尚一郎の首に回された腕をほどき、膝から飛び降りようとしたが、逃げられないように抱きしめられてしまった。
「ダメかい?」
肩に載っている尚一郎の見えない顔からは、泣きそうな声。
まるで母に縋る幼子のような尚一郎に、朋香はなにも云えなくなってしまった。
「……うん。
朋香が嫌がることはしたくないからね。
Verzeihung.……Ich liebe dich.du bist mein Shatzt」
耳元でぼそぼそと囁かれた言葉の意味はわからない。
かろうじて、「マインシャッツ」とだけは聞き取れた。
顔を離すと、泣き出しそうに歪んだ目が、レンズの向こうから朋香を見ている。
唇に口付けを落とすと、尚一郎は朋香を膝から下ろした。