契約書は婚姻届
くすりと笑われて恥ずかしくなる。

昨日は眠気に耐えかねて尚一郎にしがみついたまま眠ってしまい、目が覚めたら自分のベッドだった。

どうも、尚一郎が運んでくれたらしい。

今朝、それでなくても気まずいのに、くすりと笑われて死ぬほど恥ずかしかった。

あんな思いは二度とごめんだ。

「もう終わるからちょっと待ってて」

ちゅっ、額にふれる唇。

尚一郎は無駄にキスをしたがる。
これも一週間ほどがたったいまではだいぶ慣れたが、たまにドイツ人ハーフじゃなくてイタリア人ハーフじゃないのかって疑いたくなった。

「はい、おしまい。
淋しかったのかい、Mein Schatz(マイン シャッツ)」

いくら、仕事と割り切ったり慣れてきたりしても、あたまを撫でられ頬に口付けされるのは、子供扱いされている気がして腹が立つ。
< 68 / 541 >

この作品をシェア

pagetop