契約書は婚姻届
それでようやく、朋香を載せたままだったことを思い出したのか、尚一郎はソファーに座り直す。

「このまま呼び出しがなければいいと思ってたけど、そう簡単にはいかないか」

なにが起こっているのかわからなくてきょとんとしている朋香の額に口付けすると、尚一郎は朋香を膝の上から下ろした。

「野々村、すぐにスタイリストを呼んで。
……朋香、おいで」

尚一郎に手を引っ張られてきたのは自分の部屋。
入るなり、バスルームに押し込まれた。

「悪いんだけど、あたまのてっぺんからつま先まで、ぴかぴかに磨いてくれるかい?
許可してくれるんなら、僕がやるけど」

「自分でできます!」

ニヤリと笑った尚一郎にバスタオルを投げつけると、閉まったドアに当たって落ちた。

全く意味のわからないまま、シャワーを出して云われたとおりに身体を磨く。

……本邸からの使いって云ってたよね?
それって家族がお昼を一緒に食べようって云ってるのと違うの?
なんであんなに、慌ててる上に嫌そうなんだろう。
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