契約書は婚姻届
「そういう人間なんだ、あの人たちは。
ごめんね」

尚一郎に謝られて、慌てて首を振る。

……悪いのは尚一郎さんじゃない、祖父母の方だ。
それに、尚一郎さんはこういう事態を見越して、私に野々村さんからいろいろ習うように指示してくれた。

そう気付くと、尚一郎の心遣いが嬉しかった。

 
寝具は敷き布団じゃなくベッドだったが、二つ並んでいた。

……別の部屋で、とか云ったらさすがに今日は怒られるよね。

悩む朋香に尚一郎はさっさとベッドに入ると、空けた自分の隣をぽんぽんした。

「おいで、Mein Schatz」

意味がわからないというか、わかるけど理解したくない。

「なにもしないから、今日は一緒に寝てほしいんだけど。
ダメかい?」

くぅーん、まるでそんな声が聞こえてきそうな顔で、しかも涙で瞳をうるうると潤ませて尚一郎が見てくる。
< 94 / 541 >

この作品をシェア

pagetop