お願いだから、好きだと言って!!



「わぁーっ」



「やりにくいんだけど……」



隣で真っ直ぐ見つめてくる絃ちゃんに、やりづらさしかない。



そんなに珍しいことか?



皮むきなんて。



「ご、ごめんなさい。あまりにも綺麗にむけてるから」



「本当バカ」



「え?」



「なんでもない。はい、これ切って」



なんで俺、こんなに女と話してるんだろう。



会話という会話をしたのは、何年ぶりだろうか。



危なっかしい絃ちゃんの包丁さばきはいかほどかと横目で覗くと、ぎこちはないものの、様にはなっている。



料理教室で学んできたんだろうか。



じゃがいもの皮むきはあっという間に終わり、次は人参へと手を伸ばす。



人参の皮むきを始めた頃、空気を読んでか、ずっと黙り込んでいた絃ちゃんが口を開いた。



「あの、雅さん」



「……」



必要以上には会話をしたくないと、俺は聞こえているけれど返事はせずに口を閉ざす。



「雅さんにひとつ聞きたいことがあって」



今更俺に聞きたいこと……



一体何のことだろうか。



いずれにしろ、ただ3ヶ月間の居候であるこの子に話すことは何も無い。


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