お願いだから、好きだと言って!!
「葵くん、どうかした?」
様子が明らかにおかしい葵くんに声をかける。
私が帰ってきてから葵くんは、その場から一歩も動いていない。
「絃ちゃん、悪いことは言わないからすぐに着替えて髪を縛った方がいいよ。悪いこと言わないから」
葵くんは真面目な声でそう言った。
こんな声、聞いたことない。
嫌味とかそんなものじゃなくて、本当に真剣に。
「そんなに、似合わないかな……?」
葵くんがそんなに真面目に言う意味が全くわからない私は、本当は似合っていないのかもしれないと心配になる。
「ううん!そんなことないよ。でも……その姿で会わない方がいい」
会わないって、誰に?
雅さん?それとも蓮くん?
それとも……他の誰か?
お世辞かもしれないけど、似合わないわけではないらしい。
でも、何かを……誰かを本気で心配しているように見える。
どこか遠くを見て、私に誰かを重ね合わせるように。