お願いだから、好きだと言って!!




「おかえり、絃ちゃん」



「ただいま、雅さん」



そんな葵くんの後ろからひょっこりと顔を出したのは、雅さん。



満面の笑み、とは行かないまでも微笑む雅さんの表情は、少し柔らかくなったと感じる。
そのまた後ろ。



リビングのドアに寄りかかる蓮くんの姿を見つける。



「蓮くん……」



顔を合わせると、やっぱりなんて言ったらいいのかわからない。



とても不安になる。



それでも、ちゃんと向き合わないと……



私が帰ってきた意味がない。



「……ごめんなさい」



「何を謝ってんだよ」



「えっ……その、蓮くんを怒らせちゃったから」



「だったらその、俺を怒らせた理由わかるのか?わかるわけねぇだろ?お前には関係ねぇんだよ。放っておけ……」



勇気を出して、話を切り出したのに。



やっぱり蓮くんは、そう簡単に心を開いてはくれない。



でもこれで、蓮くんの中で何かがあったのは確か。



態度は怒っているのに、どこか悲しげな表情を浮かべる蓮くんを見ていると、心が苦しくなった。



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