お願いだから、好きだと言って!!



「絃ちゃんは優しいよね。相手の気持ちに寄り添ってくれる。俺がそんな絃ちゃんにどれだけ救われたことか」



雅さんはきっと、あの日のことを言っている。



雅さんの過去を聞いたあの日。



あれから雅さんは少しずつ前へと進み始めた。



「それで、私にあんなに苛立って……なのに悲しげな顔をしていた理由って何なんですか?」



「その容姿だよ、絃ちゃん」



「私の容姿?」



隣に座っている葵くんが、私の髪に指を通しながらそう答えた。



「このアッシュブラウンの髪色もふわふわのボブも……あの日はメイクも似てたんだよ、蓮兄の恋した真里奈ちゃんの姿にね」



だからか、だから葵くんは私の姿を見て、蓮くんに会うのを止めたんだ。



こうなることをわかっていて。


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