お願いだから、好きだと言って!!




「もう、早く服着てよ」



「わかったよー。本当はもっと絃ちゃんのこと、ドキドキさせたかったのに」



……バカ。



そんなこと誰も頼んでないのに。



「ねぇ、絃ちゃん。ここ座って?」



「え?」



上を着て、こっちに来た葵くんの右手にはドライヤーを持っている。



そのままソファーに座った葵くんは、そう言ってトントンと左手で座る場所を指示した。



「えっと……」



「髪の毛、まだ乾かしてないんでしょ?」



「そうだけど……」



「なら、おいで?」



そんな可愛らしい無邪気な笑顔で誘われたら、断れない。



葵くんの指示通りに、目の前に座り込む。



電源を入れたのか、ブォーとドライヤーの温風の音が聞こえる。



それと同時に、葵くんが私の髪に触れた。




< 230 / 260 >

この作品をシェア

pagetop