お願いだから、好きだと言って!!




「んだよ、メソメソしやがって」



「っ、うるさいなぁっ……」



こんな涙目で睨んでも何の効果もないと思うけど。



「……」



いつもならバカとかアホとか返してくるはずの蓮くんなのに、今日は無言で目をそらした。



自己中心的、俺様、毒舌。



悪いところをあげればキリがないけれど、本当に素直じゃない蓮くんは、なんだか放って置けない存在。



まぁ、好きとは意地でも言ってあげないけど。



でも、本当に……この家の、佐伯家の3兄弟がだいすきだから。



せめてお母さんとお父さんが日本に帰ってくるまでは……



「まだ私、ここにいたい……」



「え?」



ぼそっと呟いたその呟きは、3人の耳には、はっきり届いていない。



「だから……」



お願いです、雅さん、蓮くん、葵くん。



「お願いだから、好きだと言ってくださいっ」



「絃ちゃん……僕は、絃ちゃんのことだいすきだからねっ」



ありがとう、葵くん。



でもこの夜、雅さんと蓮くんからの返事は返ってこなかった。








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