お願いだから、好きだと言って!!



瞳から手鏡を受け取って、瞳の見本を見ながら自分を見て……と交互に確認しながら何度も実践してみる。



「よし、絃。これは家で要研究しなさい」



「はい……」



隣を通る店員さんに笑われ、恥ずかしながらも10分、15分粘って頑張ったけれど、結局見本のような可愛いアヒル口にはならなかった。



これは、家に帰ったらもう1回やってみよう。



頼んでいた飲み物も底をつき始めてきた頃。



「そして、1番ぶりっ子に大切なのは話し方よ」



「話し方?」



「そう。声のトーンをあげて語尾をね、のばすのよ」



「瞳、わかんな〜いって感じよ」



「ほうほう」



心の中で、メモを取る。



やってみなさいと言われて、私も負けじとやってみる。



「絃、わかんな〜い」



「それじゃトーンが同じよ。もう少し高く!」



「い、絃……わ、わかんな〜いっ」



こ、こんな感じでいいのかな?



ちらっと瞳を見ると、満足そうな笑みを浮かべている。



「なんとかだもんっていうのもいい感じよ!」


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