お願いだから、好きだと言って!!
「ありがとう」
「本当にね、私、一人っ子だったから……可愛い弟が出来たみたいで嬉しいんだ……あっ」
「……ふっ」
……もしかして、やっちゃった?
葵くんの手が止まって、様子が変わったと思った時にはもう遅い。
弟のよう、そう思っていたのは本当のこと。
それでも、私のことを嘘でも好きになっちゃったと言っていた葵くん。
悪いこと、言っちゃったかもしれない。
「ねぇ、絃ちゃん。髪の毛、終わったよ?」
「え、あ……ありがとう」
何か言われる、そう思ったのに葵くんは、何でもなかったかのような態度をとる。
そんな姿を見て、拍子抜けしてしまった。
その隙に葵くんはドライヤーのコードを巻いて片付け始める。
なんとなく気まずくなってしまった私は、早くこの場を立ち去ろうと、立ち上がった。
「……きゃっ」
トンと押されたかと思えば、私の視界はぐるりと回り、いつの間にか白い天井が見える。
今自分がどんな状況で、何をしてるのか、全然ついていけない。