お願いだから、好きだと言って!!
私たちもそろそろ帰ろうかと支度をしていると、いきなり瞳が「あっ!!」と声を上げた。
「な、何!?」
あまりにも大きい声を突然出すものだから、大袈裟に驚いてしまう。
「ごめん、絃!今日彼氏とデートの約束してたの、すっかり忘れてた…」
中学の卒業式の日、告白されて付き合い始めた瞳とその彼氏さん。
瞳の彼氏は、隣町の高校に通っているようで、16時に駅に集合なんだとか。
やばい、遅刻する!と私に両手を合わせて謝ったあと、「またね!」と駆け足で行ってしまった。
瞳も行ってしまって、何もすることがない私は、ひとりで帰路につく。
私の家は、小さな狭いアパート。
年数もかなり立っているから、お世辞にも綺麗とはいえない。
けれど、お父さんの会社の社員専用アパートだから、文句は言えないんだ。
学校からは、最寄り駅からJRに乗って5駅。
そこから歩いて10分くらい。
だから、通学に1時間くらいかかってしまう。
遠いところは難点だけど、制服も可愛いし、学力も私に合っているのはここだったし、大切な親友の瞳とも出会えたわけだし、この高校を選んだことに後悔はしていない。
電車に揺られ、家についた頃、日が長くなってきていたからか、まだ明るかった。